道路建設等で森林が分断・細分化されると、ヤマネやリスのような樹上性動物に様々な影響が及びます。
これらを軽減するため、分断された森林の間に設置する人工的な通り道を「アニマルパスウェイ」(Animal Pathway)と呼んでいます。
清里に建設されたヤマネブリッジをはじめ、リスやモモンガの実施例があります。
道路上で歩行者や車の安全を確保し、設置後のメンテナンスはできるだけ簡単に、建設費を安価に抑えられれば…..全国にアニマルパスウェイの輪が拡がる!
そんな「普及型アニマルパスウェイ」の具体的な提案を目標に、2004年に研究会が発足しました。
メンバーとして、財団法人キープ協会・清水建設・大成建設・ニホンヤマネ保護研究グループが参加しています。それぞれの専門性を活かして様々な観点からアニマルパスウェイの研究・実践・普及に努めています。
樹上性の小動物が利用しやすいアニマルパスウェイは、どんなものだろう?
例えば、橋の材質について。
耐久性を考慮すれば金属性が妥当だが、動物には好まれないのではないか?
色は?形は?大きさは?設置場所はどこに?
様々な課題が議論され、ヤマネの飼育ゲージ内で実験をして反応を確かめたり、キープ協会敷地内に実証用のアニマルパスウェイを架設してモニタリングをしたり、ひとつひとつの結果をまとめていきました。
2007年8月、ついに山梨県北杜市の公道上にアニマルパスウェイが誕生しました。設置までには、たくさんのボランティアの方にもご協力をいただきました。
これを機にアニマルパスウェイは雑誌・ニュース・マンガにまで登場し、全国のメディアで紹介されました。
アニマルパスウェイの両端にはモニタリングカメラを設置し、内部の様子を録画しています。
設置から16日目、最初にパスウェイを渡った動物はヒメネズミでした。
その翌日にはヤマネも無事に通過。この2種のパスウェイ利用回数はひと夏だけで3ケタに及び、パスウェイの存在が認知されたようです。
実験用のパスウェイではニホンリスの利用も確認できたのですが、公道第1号では2009年4月時点では確認できていません。
リスの研究者等から意見を聞き、パスウェイ周辺の状況など改良する予定です。
また、公道第1号の結果を踏まえ、設置場所の選定・バスウェイの設営・モニタリングシステムの運用などについてくわしく検証し、仕様をまとめていく必要もあります。
地方自治体への普及にあたっては、市民・地域のボランティア団体・民間企業等とどのような連携ができるか具体例も提案していけると良いと思います。
モニタリング用カメラの調整中。
弊社はニホンヤマネ保護研究グループの一員として、主にモニタリングシステムの運用をお手伝いしています。現行のシステムでは、録画した映像はすべて人間の目で確認し必要な部分を手動で切り出して保存しています。野生動物のための安価な映像解析システムがあるとよいのですが…..現在のところなかなか難しいようです。
研究分析に利用する場合はクリアな映像を確実に残すことを優先しますが、今後一般への普及に向け効率性やコストを考慮した方法を検討していきます。
追記(2012.3.18):このページを執筆した頃(2009年4月)から3年が経過しました。その後、リスの利用が確認された上に、想定外のテンまで登場したり・・・。新たに那須平成の森にもアニマルパスウェイが設置されるなど、話題が盛りだくさんです。最新情報は、アニマルパスウェイ研究会のWebサイトをご訪問ください。
◆ 森や林をつなぐ動物用の橋いろいろ
◆ アニマルパスウェイについて、もう少し詳しく知りたい方へ
◆ アニマルパスウェイについての報道など
弊社では、樹上性動物のイラストをデザインしたグッズを制作・販売しています。これらの売上の10%は樹上性動物とその棲息環境を守る活動に充てられ、アニマルパスウェイの普及活動にも役立てられます。
イラストは動物画家:薮内正幸さんが描いたアニマルパスウェイゆかりの動物たちです。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
これらの商品は、山梨県北杜市内の清里キープやまねミュージアム販売コーナー・薮内正幸美術館でも購入できます。